由美、18歳の検事志望の学生、新宿駅東口で声かけたがどうにもならず


「そういうアルバイトはできません」ときっぱりと

昼間の新宿駅東口。
まばらな人の中でのスカウト。
2時間ほどで立ち話を3人しただけ。

新宿駅東口の映画看板前
新宿駅東口の映画看板前からスカウト通りを見て

そんなとき。
スースーという感じで歩く彼女が。

白地に花柄のスカートをなびかせている。
シルクかナイロンか判らないが、薄手の生地のスカート。
急いでいるというわけではなさそうだ。

目を向けていると目が合う。
「あの人、うさんくさいな」ぐらいは思っているのがわかる。
でも警戒はしてない様子。

「ちょっといい?」
「ハイ・・・。なんですか?」

スッとした感じで立ち止まり、少し首を傾げる。
すごく丁寧な反応。

「これから何か用事?」
「はい」

シワのないラウンドカラーの白いブラウス。
清潔感がある黒いストレートの髪。

育ちがよさそうというのが、自然ににじみ出ているものがある。
AVの話なんてしたら、びっくりしそう。
一瞬だけ躊躇させた。

「買い物?」
「はい、携帯電話を買おうと思いまして」

あくまでも丁寧。
めずらしいパターンだ。

「今ね、バイトするコ探しているんだけど」
「どんなアルバイトですか?」
「エッチなバイト」
「そういうアルバイトはできません」
「そうだよね、そういうと思った。ごめんね」
「いえ、すみません」
「携帯だったら、そっちに安い店あるから、そこまで一緒に行こう。

このコはしないな・・・、と感じた。
あきらめよう。

一緒に歩くのを彼女は少し戸惑った様子。
「こっち、こっち」というと、ついて来た。

「携帯はどんなの買うの?」
「ドコモの携帯です。今、PHS持ってますけど、買い換えようと思いまして」
「そこが安いし、在庫も多いよ」

“ ピッチ ” と言わず “ PHS ” というところが良い。
白いブラウスに黒い髪が映えている。

こういう女のコを、やさしく毒牙にかけたい。
一緒に歩きながら、このコとお茶ぐらいしたいな、どうしようかと考えた。

いずれにしても、押すにしても、引っ張るにしても時間がかかる。
女のコの状態もスカウトできるタイミングでもない。
まだ、早い時間だし、時間がもったいない。

ま、いーか。
「さて」と言ってから「それじゃあね」と別方向に歩いた。

びちびちと湧いてきた妹願望

それから10人には声をかけたから、1時間ほどたっただろうか。
歌舞伎町交差点の靖国通りで彼女を見かけた。

彼女も自分に気がついたみたいだ。
また声をかけた。

「携帯買った?」
「はい」
「どんなの買ったの、見せて」

口元に笑みを見せながら応じる彼女。
紙袋の中には“P209”が入っていた。

「また見かけたから、何してるのかな、と思ってさ」
「いろいろと見ていたんです」
「新宿は良く来るの?」
「用事で来たりしますけど。この辺りははじめてです」
「そう。歌舞伎町に遊びにきたりしないの?」
「よくわからなくて」

一瞬、田舎から来たコかな、と思う。
警戒心が感じられない。

「今、学生でしょ?」
「はい」
「何を勉強してるの?」
「法律です」
「ふーん。弁護士志望とか?」
「検事になりたいんです」
「エッ、検事!」

こんなかわいい検事だったら、犯罪者になめられる。
犯罪者の理屈にもついていけるのか。
もう少し、話したくなった。

「歌舞伎町でケーキ食べない?」
「エッ」
「オレ、ケーキ好きなんだけど、男1人だと恥ずかしくて」
「フフ・・・。いいですよ」

喫茶店でケーキを食べる。
自分がケーキを食べ「うまい」というと「フフッ」とかわいらしく笑う。

嗚呼。
また妹願望が。

こんなコが妹だったら幸せだろうな。
彼女は話し方が丁寧で、しぐさから育ちが良いと言うのが分かる。

なんとか聞き出すと、自宅が渋谷区松涛らしい。
お嬢様なんだろうか。

「センター街が近いから、友達とオールとかで遊ばないの?」
「しないですよ」
「なんで」
「うーん。つかれるから、帰って寝てます」

そう言われればそうだ。
自宅が近くにあればオールなんてしないだろう。

「ウチにいるときは、何してるの」
「うーん。片付けとか」

よくわからない。
スポーツの話になる。

「スポーツは何かしてるの?」
「乗馬クラブに入っているんです」
「乗馬か」
「家族が動物好きなんです。だから私も入っているんです」

よくわからないが、彼女は乗馬が似合いそうだ。
父祖ゆずりの代々からの家柄のコは、生活は質素らしい。

学校で地味なコのウチに遊びに行ったら、お手伝いのバアやがいてビックリした事がある、と以前知り合いにきいたことがある。
逆に、親が一代で成り上がった金持ちは成金趣味になるという。

途中で彼女のPHSがピピピッと鳴った。

「電話いいですか?」
「どーぞ」

彼女は控えめに話す。
電話が終った後、ニコッと笑んで「失礼しました」と。
そんな彼女を見て、いじわるを言いたくなった。

「あのさ」
「はい」
「オレの妹になれよ」
「エッ」
「だから、オレの妹になれ」
「それは、できません」
「そうだね、オレ、一体なに訳わからない事いってんだろう」

フフフッと彼女は笑った。

嗚呼。
なんでこんなにいい笑顔なんだろう。
しみじみしてしまった。

歌舞伎町交差点を渡るとアナル専門店の風俗嬢がいた

番号を交換し、また新宿で会う約束をする。
店を出ると「ごちそうさまでした」とスーとお辞儀をする。

ウーン。
こんなお辞儀、久しぶりに見たような気がする。
なかなか、その辺に歩いているコではできない。

「いい、もし誰かに付きまとわれたりしたらすぐに電話するんだよ」
「大丈夫ですよ」
「知らない人には、ついていっちゃダメだよ」
「分かってますよ」

といってまたフフフッと笑んだ。
その笑顔を見てまた言ってしまった。

「オレの妹になれよ」
「それはできません」
「冗談だよ、それじゃーね」
「はい」

彼女は、またスーとお辞儀をした。
あんなコいるんだな。

教養ってヤツなんだな。
高校中退の無学な自分にはまぶしい。
さて、ホコリっぽい道端でスカウトか。

なんだか幸せな気持ちというのだろうか、鼻歌でも歌いたい気分だった。
そんな気持ちのまま歌舞伎町交差点を渡ると、向こうからテクテクと歩いてくる女のコ。

自分が視界には入ってはなく歩調は緩いまま。
ガランガランと厚底サンダルの音がする。

少しの小走りで声をかけた。

「ちょっといい?」
「・・・」

彼女は無言のまま目を向けた。
知り合いなのか確かめる目つき。

化粧が歪んでニタッとした顔つき。
黒っぽくてヨレた服装は、2、3日着たきりかも。

この感じ、おそらく風俗の女のコだ。
これはもうスパッと。

「もう、店やってる?」
「してるよ~」
「どこ?」
「●●●●●」
「さくら通り入った店だよね」
「そう~」
「性感だったっけ?」
「ちがうよ」
「イメクラ?」
「ううん。アナル専門店」
「あっ、アナルOKなんだ。それじゃさ、AVやろうよ」
「ええっ」

「アナル」という言葉に通行人の中年男がチラッとこちら見る。
しかし彼女は、全く気にしてない様子。
AVの拒否反応もでない。

「AVやろうよ」
「・・・」
「考えてみて」
「うーん。だってさ・・・」
「うん。どうしたの?」

AVは未経験だ。
これは押せる。
脱いだらどんな裸をしてるんだろう?

– 2002.11.5 up –