風俗店の講習で射精はありか?


客のすべて衣類を丁寧に扱う

ノリでいくとき、かしこまるとき、気を遣うとき。
イチャイチャするところ、テキパキするところ。

これらの減り張りをつけるのは、やはり教えてどうこうなるものではなくて、その女の子がすでに持ち合わせているセンスになる。

講習で教えると全裸になっておきながら、それはないという話にはなるが。

「タオル使いを教えるね」
「はい」
「ここにタオル、たくさんあるから使って」
「はい」
「でね、お客さんって靴下を脱いだときに、この脱衣カゴにポンと放ったりするから」
「はい」
「そうするまえにね、はい、ここにおいてって、こう、4つ折りしたタオルを開いて差し出してみ」
「・・・こう?」
「うん、で、靴下が置かれたらタオルを閉じて、脱衣カゴに置いてあげると」
「はい」

同様に客のパンツも、バスタオルに挟んで脱衣カゴに置く。

客からすれば、パンツや靴下までを丁寧に扱ってくれるだけでサービスがいい女の子となる。

で、すぐに客の腰にバスタオルを巻いてあげる。
客が自身で腰にバスタオルを巻こうとしても、代わりにしてあげる。

小さなことは、全部してあげる。

「ちょっと忙しいけど、慣れるまではできるかぎりでいいからさ」
「はい」
「ただね、慣れてきた女の子に多いけど、服脱いでいいよとか、脱いだら服ここに入れてとか、タオル巻いていいよとかって、それで完了っていうのはしない。お客さんに指示するだけってのはしない」
「はい」
「スリッパもね」
「はい」
「これ、履いてねでもいいけど、つま先を揃えて、はい、どうぞって最初の1回だけはしてあげて。とくにおじさんには絶対して」
「あ、はい・・・」

ちょっと細かい所作だが成果は出る。
この場合の成果とは本指名だ。

スカウトした女の子を風俗に入れ込んだあとに、それらの所作をやらせてみると本指名が増えたこともある。

「うん、こういう小さなことって、ベテランの女の子でもあまりしてないから。するだけで、ああ、いい子なんだなってなるからね」
「はい」
「できるな?」
「はい、できます」

あの真由美が、これらの所作は教えてくれた。
真由美を風俗に勤めさせたとき、本指名を増やした秘訣を訊いてみると教えてくれたのだ。

今おもうと、真由美は風俗嬢としての出来は相当によかったのかもしれない。

風俗店の貴重品袋の意味

『貴重品袋』というシールが貼ってある透明のビニール袋が、個室のカラーボックスに置いてある。
ジッパーで密封できる防水のビニール袋だ。

シャワーにいくときに、財布から目を離したくないという客がちらほらといる。

そのときは、財布を入れた貴重品袋を持ってシャワーにいくのだった。

偽造クレジットカード事件の名残だ。

風俗店やキャバクラや飲食店で、クレジットカードのデータをスキミングするのが、5年か6年ほど前に歌舞伎町では多発した、というより単に流行した。[編者註15-1]

紹介者により無料貸し出しされたスキマーという手の平サイズの装置に、クレジットカードを通すだけでデータがコピーされた。

スキマーなど知らない人がほとんどなので、飲食店では目の前でクレジットカードを余計に通しても支払いの処理だと思われて咎められもしない。

悪質な風俗店では、シャワーを浴びている間に店員がスキミングをした。
ひとつのデータは、10,000円で即金で買い取られる。

買い取った紹介者は15,000円で売り、さらに人を介して20000円で売られて、やがては偽造クレジットカードが作られる。

しかし金品がなくなるわけではないし、偽造クレジットカードを使うのは全く知らない人だし、どこでデータが盗られたのかわからない。

心当たりがあったとしても証拠もないので、スキミングした側が罪に問われることはなかった。

当然として社会問題となる。
2年ほどして対策がされて偽造カードは流行らなくなったが、歌舞伎町では財布から目を離したくない、という客が未だにいるのだった。

そこまでレナには説明しないが「もし、お客さんに言われたら、ここに貴重品袋があるからね」とは伝えた。

キスにまとわりつく罪悪感の正体

ソフトな講習とはいっても、教えながらさせてみるのは、シャワーだけでもけっこう時間がかかった。

グリンスとイソジンの使い方に、体の洗い方に。
性病については、見分け方にその対処に、予防に、雑菌に。

タオル使いについては、背中ポンポンして、すぐに腰巻をしてあげたり。

で、個室に戻ったら、キスからプレイをはじめる。

「風俗をするのは彼氏には内緒」とだけシャワーのときに聞き出したときに、彼氏以外の男とキスすることに罪悪感があるのが十分に伝わってきた。

罪悪感とは口にしてないが、言い方がそうだった。
キスをNGにする女の子の、理由の上位に挙がるのが罪悪感。

ポラロイドの写真を撮ったときの、嫌々ながら風俗をする表情というのは勘違いで、彼氏に対しての罪悪感だったのか。

振り切れてなかった罪悪感が、そんな表情にさせている。
しかし、深刻な種類の罪悪感ではない。
うっとうしくもある罪悪感だ。

胸の内を重苦しくさせているのを早く振り切りたいだけで、しゃりしゃりと胸の内が削られるかのような切迫感はない。

この程度の罪悪感を持つ女の子は、どんなのでもいいから、きっかけや言い訳さえ作ってあげればやる。
結局はやる。

自分からすれば、女の子のいう罪悪感とはスピードが出るうえに急回転もきく危なっかしいものである。

「レナ、キスはさ」
「・・・ウン」
「自分から舌を突き出してみ、こう」
「こう?」
「うん、そうすれば、お客さんは舌を合わせてくるだけで満足もするから」
「ホントに・・・」
「うん、だし、これだったら唇だって吸われないし、舌だって入れられないでしょ?」
「・・・ウン」
「これだったら、厳密にはキスしたことにはならない」
「なるよぉ・・・」
「本当のキスとはちがう」
「ンン・・・、なる・・・」
「舌を入れられてないでしょ?本当のキスとはいえないよ」
「ンン・・・、本当じゃなくてもなる・・・」
「ううん、これ常識だよ、彼氏にも訊いてみ。それは本当のキスじゃないって言うから」
「きけない・・・」
「じゃ、してみよう」
「・・・」

もう丁寧な返事はやめているレナは、目を閉じて、ゆっくりと舌を突き出してきた。

その舌先を唇で少し吸ってみて、肩口を抱いて背中を摩る。

風俗でのキス
キスNGは自身に言い訳ができれば解禁できる・・・かも

そっと抱いてみると、レナは「ンン・・・」とかすれ声で呻いてからは呼吸が深くなっている。

生フェラもやれよ・・・と念じながら、もっときつく抱きながら舌先を吸った。

唇と唇を少し触れてから、抱きしめを解いて、つでにバスタオルも解いた。

「レナ」
「ン」
「もう、大丈夫だ」
「・・・ウン」
「これだったら、彼氏は大事にしてることになるから」
「・・・そうなの?」
「キスよりも大事なのは気持ちでしょ?」
「・・・ウン」
「キスしても気持ち変わらないでしょ?」
「・・・ウン」
「じゃ、大丈夫だよ。店がおわったら彼氏を大事にすればいい」
「・・・ウン」
「お客さんとちゃんとできるな」
「・・・ウン」

もう普通にキスもするようになるだろう。
最初の1回ができれば、あとはできるのだ。

残念なことに女の子はそれほど繊細ではないし、以外にグロテスクに寛容でもある。

講習で射精をしないという不文律

お互いに裸ではあるが、全身リップは口頭で教えるのみ。

耳攻めに、乳首攻めに、指フェラに。
涎音に、キス音に、焦らしにと身振り手振りも交じる。

フェラも同様に、口頭で教えた。
電動バイブを手にとって、チンコの扱いかたに、感じるツボの攻めかたに。

フェラ顔の見せかたに、金玉の揉み加減、裏筋の撫で加減と電動バイブ相手に実技もあった。

「そういえば、レナってさ」
「ウン・・・」
「フェラでイカせたことあるの?」
「エエ・・・、ないよ・・・」
「ええ!ないの?」
「・・・」
「フェラは?」
「ある・・・」
「イカせられるか?」
「できる・・・」

大丈夫かなと思ったが、こういうのは女の子はすぐに覚える。
イカせる方法も、おそうじフェラの重要さも口頭で教えた。

シックスナインはしたい。
が、教える名目が浮かばない。

跨ればいいだけのことである。
教えるも教わるもない。

「レナさ、シックスナインだけどさ」
「ウン」
「わかるでしょ?」
「ウン・・・、上になるんでしょ・・・?」
「そう。シックスナインすると男ってイキやすくなるからしてあげて」
「ウン・・・」
「したことあるでしょ?シックスナインくらいだったら」
「エエ・・・、ないよ、そんなの・・・」
「ええ!ないの?」
「・・・」
「レナさ、できるか?」
「できる・・・」

フェラも、シックスナインも、我慢した鬱憤があったのは確かだったようだ。
ゴムフェラ希望は、強い口調で生フェラに変更させた。

「レナさ」
「ウン」
「生フェラできるでしょ?」
「・・・」
「バックも高いし、お客さんもつくし」
「・・・」
「レナさ、たぶんゴムフェラだと、イカせられないよ」
「・・・」
「生フェラがイヤってよりも、彼氏にわるいってあるんでしょ?」
「・・・それもある」

勝手に決めつけたのだが、レナは小さくつぶやいた。

これは言い訳が必要なだけだ。
キスの言い訳が延長されて、生フェラにも持ち込まれた。

「フェラを生でするとかしないより、気持ちのほうが大事なんだから」
「・・・」
「わかるでしょ?」
「・・・ウン」
「彼氏のだとおもえば、生でできるはずだよ」
「エエ・・・」
「それが彼氏への気持ちだから」
「・・・ウン」
「わかるな?」
「・・・ウン」

あとは店長の力学が働く。
レナの生フェラは解禁された。

素股で重要なのは擬似喘ぎ声

素股もバイブで教えた。
騎乗位になって、バイブを手と股間で挟んで、腰をくねらせた。

が、どうも勃起が邪魔、というよりもバイブが邪魔だ。
途中から勃起を使っての実技となった。

最初は腰のくねりがぎこちなかったレナだったが、3分も経たないうちにコツをつかんで、上手にくねらせている。

手の平で勃起を股間に押し付ける圧着感もいい。

「レナ、腰と手はそれでいいよ、で、素股の基本は声だから」
「声・・・?」
「うん、声をオーバーに出して」
「ウン」
「わざとらしくでもいいから」
「それでもいいの?」
「うん、あのね、もちろん男のほうだって擬似セックスだってことはわかってるけど、女の子がね、ああいっちゃうぅっとか、もっとぉっなんていうとね」
「・・・」
「ああ、オレをよろこばせようとして、ここまでやってくれてんだって、気持ちいいってよりもちょっとした感動だよね、それがあるさ、ああ、なんかイキたいって、このコでイキたいってなるんだよ」
「・・・」
「あれ、オレ、熱く語ったけど、まあ、ともかく声だよ、声」
「ウン・・・」

一瞬、レナに喘ぎ声の練習をさせようと思ったがやめた。
すでに1時間が経とうとしている。
負担がかからないように1時間30分には納めたい。

正上位素股も教える。
勃起の位置を確めてみようと、1分くらいはレナの体を抱いた。

抱き心地を確めるくらいはしたかった。
髪の匂いをこっそりと嗅いでもみた。

抱き込んだまま、擬似の喘ぎ声の練習もしてみた。
が、レナは照れを見せて進まない。

「お客さんにはちゃんとできる」と言い張るので、練習はなしにして、抱いているレナを離した。

少しの射精感を残して、シャワーを浴びて、講習を終えた。

口頭で教えるのを多めにしても、すべて終わるのには1時間20分はかかっている。

実際にやってみたほうが、細かなところまでできる気もする。
ソフトな講習とはなんだろう、と考えてしまった。

実技がないことが、射精しないことが、ソフトな講習なのか。
ソフトな講習が優良店なのか。

どんな講習がいいのだろうか・・・と服を着てから勃起の位置を直した。

体験入店のはじめての客

講習を終えると、すぐに最初の客がついた。

前回のマユミに初めての客を付けたときには、少しの無常感があって店長失格だとうな垂れたが、もう今回は慣れたようで呼吸も心臓も平常だった。

レナは「こんにちわぁっ」と客に挨拶をして、手を引いて個室へ向かう。

ちょっと遅めに「シャワーはいりまーす!」と声がしたので、カーテンから様子を見てみるとバスタオルのレナが客の手を引いていた。

大丈夫そうだ。

45分を2分か3分ほど押したが、レナは初めての客を帰した。
カーテンが閉ってから声をかけた。

「だいじょうぶだったね」
「うん、もう・・・、あっという間だった・・・」
「ペースがわからないだろ」
「うん」
「やってるうちにわかるよ、でさ」
「うん」
「次のお客さん、まっていて」
「え、もう?」

素人系ヘルスにくる早番の客には『未経験で入店した新人です』という推し文句は間違いなく効くのだった。

30分待っていた客だった。

「いけるな」
「うん」
「つかれてないか?」
「ちょっと」
「じゃ、このあとは休憩いれよう。ハラすいてないか?」
「ちょっと、すいたかも・・・」

レナは上気した頬で答えている。
自分用語でいう『メスの目』になっている。
覚悟を決めた女の子が突っ走るときの目だ。

村井が客からアンケートをとっている。
客が記入している様子からは不可がないのが知れたが、さらに村井は根掘り葉堀り訊いている。

生フェラもできてるし、声も出ていたのが確かめられた。
不思議だ。
こっちが教える以上に、女の子は上手に客を相手にする。

講習なんていらないのかもしれない。
すべての女の子は風俗嬢なのではないか、と言ってみたい。

– 2018.7.15 up –