歌舞伎町で店舗型風俗店を開業した


男性従業員は私服で接客する意図

オープン初日の2月14日は、14時に全員集合した。
服装は各自バラバラ。

自分はジャケパンに革靴。
店長だし、オープン初日くらいはと、3年ぶりにポケットチーフをスクエアで差してみた。

村井はダウンジャケットに、よく見るとゴルフズボン。
小泉はネルシャツにシルバーアクセにカーゴパンツ。

竹山に到っては、いつものハンチングに、いつも以上にジーンズがずり下がっていて、腰からは柄のトランクスが見えている。

各自、きれい目のカジュアルな服装でとしたらこうなった。
なんだか、自分がひとりで気負っているようだ。

カジュアルな私服とするのは、店員がスーツにネクタイ姿だと仕事きっちり感がでてしまって、素人系の風俗店という雰囲気が崩れてしまうからと村井はいう。

オーナーの考えでもあった。
多くの風俗店では、男子従業員はスーツにワイシャツにネクタイで統一する。

セットとして役職があり、指示系統がり、各自が上位者となるのを目標として高収入を目指す。

大きな店ではそれがいいが、小さな店でそれをやっても仕方ないとオーナーは言う。

モチベーションらしい言葉として発したのは「売上が増えれば、給料は全員で一律に上げる」のみだった。

そのためには、誰かができなければ、誰かが助けなければならない。

教えるではない。
仲間として助ける。

仲間を助けることが自身の収入アップに繋がる、という明快な考えになりやすかった。

自分もそのほうがよかったので、全てを聞かなくても、そういう仕事を心掛けた。

役職や指示よりも、チームとして助け合う意識が早いうちに出来上がっていたのはオーナーの手腕といえた。

トップの考え方ひとつで、現場の雰囲気は変わるのだった。

割引チケットは所持するだけでも逮捕

各チケセンに持っていく割引チケットは完成していた。
割引チケットの束を手にして「初日だし挨拶がてらチケセンを回ってくる」と声をかけて店を出ようとすると、村井と竹山が「あああ!田中さん!」と同時に声をあげた。

「ちょっと、まってください!」
「いいよ、オレ、いってくる」
「今日は、僕がいくんで」
「いいよ、いってくるよ、挨拶もして」
「ちがうんです、ちがうんです!チケットはピンクチラシ扱いなんで、手に持って歩くとマズイんですよ。下手すると逮捕です」
「ええ!」
「もう、おねがいしますよ、初日から逮捕されたら目も当てられないんで」

ヒャヒャと笑う竹山が説明するには、割引チケットを手に持って歩いている途中で、私服刑事に職質(職務質問)を受けて逮捕された事例が歌舞伎町であるという。

ピンクチラシは、所持するだけでも逮捕となるのだ。[編者註09-1]

街路に貼り付けるのでもなく街頭で配るのでもなく、チケセンという私的な店舗の中に置くだけであっても、ピンクチラシの所持は東京都の条例で禁止されているのだった。

私物の鞄の中に少量だけ入れて、街路は歩かなければなのだ。
そうか、今日から慎重にしなければだ。

自分がやったのだから自業自得だろというわけではないと、当たり前のことに改めて気がついた。

ピンクチラシと電話ボックス

歌舞伎町に限らず、都内の繁華街の電話ボックスのガラス面いっぱいに、風俗店の広告チラシがベタベタと貼り付けてある時期が長らくあった。

チラシはタバコの箱ほどのサイズで、店名と電話番号、『ピチピチぞろい』だの『びしょびしょ美少女』などの文言。

やりすぎのチラシには、アイドルや女優の顔写真も印刷されているのもあった。

これらは、裏風俗となるホテトルのチラシだ。[編者註09-2]
もちろんチラシは無断で貼り付けられているが、電話ボックスの所有者であるNTTは放置してる状態。

無断の貼り付けは器物破損に問われるが、現行犯でないければ逮捕には至らない。

店側は『広告業者が勝手にやった。そんなところに貼り付けてあるとは知らなかった』と言い逃れができた。

目線位置から膝までびっしりと広告チラシが張られた電話ボックスは異様ではあったが、それを仕切る暴力団の存在もあったが、一方では繁華街の風物詩の扱いで当たり前に存在していた。

それが急にピンクチラシ問題とニュースや新聞で騒がれて、改めて気がつけば、ここ数年で異様な電話ボックスはなくなっていた。

ピンクチラシが条例で規制されて、取り締まりで一掃されたとは知らなかった。

ちなみに。
ピンクチラシの所持で逮捕された者とは村井だと後で知る。

本来の趣旨とは違う割引チケットを持って歩いていた村井が逮捕されたのは不運でもあったが、本人からすれば痛恨の出来事でもあったらしく「絶対に黙っていてください」と竹山から念を押されもした。

風俗店と有線音楽放送

16時前。
キャリーバッグを引く音がして、女の子が店に現れた。

コハルだ。
前の店からのプロフィールの写真で、特徴がある垂れ目の顔を覚えていた。

もちろん可愛らしい垂れ目の丸顔。
写真の印象よりは小柄で、妙に栗色の髪がツヤツヤしていて、パッツンの前髪。

新潟の実家から上京してきたばかりで、店に泊り込みで出勤すると村井から聞いていた。

店長だと紹介された自分には丁寧な言葉遣いで挨拶してきて、柔らかさがある声は感じがいい。

フェイクファーのコートを脱ぐと、以外に肉感のあるニットの胸の膨らみ。
おっぱいはD、いやEはあるか。

16時を過ぎた。
すると、コツッコツッとブーツの音をさせて、また女の子が現れた。

ナナだ。
1年前に、内山のスカウトで入店した女の子だったので存在は知っていた。

スラッとしたスタイルに見えるのは、ブーツだからというより小顔だからか。

細いデニムの脚に、いい具合に色あせているモッズコートで、少しパーマがほどけた赤茶のショートカット。
色気というのはないが、元気な声と快活な笑いに合っている。

「ひさしぶり~」と村井と竹山に6ヶ月ぶりの挨拶をするナナにも、自分が店長だと紹介された。
村井と竹山は、上手に店長の自分を立ててくれている。

コハルは20歳で、ナナが19歳。
この2人が前の店のツートップ。
お互いに仲が良くないのは、すぐに見てとれた。

ナナは、敵意の目線をコハルに向けてからは挨拶もない。
コハルはコハルで、しっかりと無視している。
感じがいい女の子たちと、ほっこりしてもいられないようだ。

程なくして現れたのはアオイ。
自分用語でメスの目をしている。

男がらみの仕事に向かうときの目で、いかにも風俗嬢らしい女の子だった。
そのメスの目で、小さく笑みながら挨拶してきた。

3人の女の子が揃うと、竹山が有線のチューナーのスイッチを入れた。[編者註09-3]

リクエストチャンネルからは、きいたことがない演歌がサビからしんみりと流れた。

次へとチャンネルは切り替えられて、ロックチャンネルとなったと同時に「竹ちゃん!それにして!」とナナが仕切るように声を上げた。

音楽が店内に鳴りひびくと、サクラが姿を見せた。
本業は派遣社員をしている。

プロフィールの写真ではちょいブスといった印象だったが、実物はおっとりしているところなど素人っぽさがある。

仕草や声には可愛い気が十分にあって、目元や鼻や口のパーツはいいが、バランスがよくないのか。

写真に映ると、どこがどうというわけもない不思議なブス感が滲んできてしまう、大袈裟にいえば悲運な女の子だった。

村井と竹山は、最敬礼といった感じで、大仰にサクラを迎え入れた。

風俗店のオーナーは在籍と顔を合わせない

本日の出勤となる4名が無事に揃った。
「では、店長、そろそろはじめますか?」と村井がくるっと振り向いた。

村井に「店長」と呼ばれるときは、自分がかしこまる合図みたいなもので、女の子がいるときは必要だった。

「おねがいします」と自分が返事をすると、今度は竹山が揉み手をするように腰を低くして、女の子たちに個室を割り当てて準備をするように促した。

女の子は、それぞれに個室に入り支度をする。
フロントでは村井がチケセンに電話をする。

「はい、今からオープンです。ええ、チケットをおねがいします」と全店に伝えている。

フロントには入り口が2箇所ある。
両方とも扉の代わりにカーテンがかかっている。

手前のカーテンを開けると受付スペースへ。
後ろのカーテンを開けると個室のドアが並ぶ通路へ。

今まで3号室に隠れていたオーナーが、後ろのカーテンからひょいとフロントに入ってきた。

オーナーは女の子とは顔を合わせない。
女の子の出入りがあるときは、空いている個室か待合室に隠れるようにしていた。

というのも、その場にいたとして、いくらオーナーではないといったところで、自分らの態度で女の子は感づくものなのだ。

『オーナーのことは黙っていて』と念を押したところで、この『黙っていて』は女の子には通用しない。

女の子によって、次第に悪意もなくオーナーの存在は明らかになってしまう。

それを懸念するオーナーは、店では気配を消していたのだった。

写真にはダミーを交ぜて出勤人数を多く見せる

割引チケットを手にした最初の客が入店してきたのは、それから10分も経ってなかった。

狭いフロントには、オーナーを含めて5人全員で立っていて、人感チャイムがピンポーンと鳴り、カラーボックスの上に置いてある防犯カメラのモニターを皆が見た。

18歳未満入場禁止のプレート
違法風俗店であっても「18歳未満の方は入場できません」とのプレートは貼った

様子を覗うように、おずおずと店内に足を踏み入れたのは、黒のセルフレームの眼鏡をかけたもっさりとした若い客。

「いらっしゃいませ!」と、カーテンをめくながらフロントから出た竹山が愛想よく声をかけた。

「当店ははじめてで?」
「・・・はい」
「あ、チケットですね、では、この料金でやりますので」
「・・・写真は?」
「はい、こちらです」

手にしていた7枚のプロフィールを手渡した竹山。
出勤は4名なのに、プロフィールは7名分ある。
これは、3名のダミーが足されているから。

出勤が4名と7名では、やはり7名のほうが客の目も止まるのでと村井。

無言のまま、プロフィールを1枚1枚シャッフルしながら凝視するもっさり。

その様子を、フロントのカーテンを少しめくり見つめる自分と小泉。
自分と小泉は、今日は受付の流れを見るだけとなっている。

3巡ほどプロフィールに目を通したあと、もっさりの手がナナで止まった。
竹山が推した。

「このコ、人気のコなんで」
「・・・」
「このコは、まちがいないです。おススメなんで」
「・・・」
「ちょうど、待ち時間なしでいけますし」
「・・・また来ます!」

なんと、もっさりは突然にプロフィールを竹山に押し付けて、素早く入り口から出ていってしまった。

竹山は悔しそうに半笑いをして「一発目、こぼしましたぁぁ」とフロントに戻ってきた。

来店客を逃すことを『こぼし』といって、忌み避けられる失態だった。

が、すぐに2人目の客となるリュックの中年男が現れた。
人感チャイムが鳴ると共に「いらっしゃいませ!」と竹山は反転した。

ジーンズがずり落ちている竹山は、割引チケットを受け取り、プロフィールを手渡して「僕が店員でなかったら、このコではいりたいですね」と冗談の口調でひゃひゃと笑いながら、すぐにナナで写真指名をとった。

ああ、服装はカジュアルでというのは、こういうノリを出すためなのだなとわかった。

「お時間は、何分コースにします?」
「45分で」
「それでは14000円になります」
「・・・じゃ、・・・これで」
「はい、20000円から、6000円のおかえし。いま、持ってきますね」
「はい」

フロントのカーテンをめくり半身だけ差し入れた竹山は「ナナで、45分、6000円バック」と村井に告げて伝票と1万円札2枚を手渡す。

村井は尻ポケットから長財布を手にとって、2万円を収めて6千円のお釣りを出して会員証と共に返した。

レジなどなくて、その長財布で売上もお釣りも管理していた。

リストと客付け

リストと呼ばれる用紙がある。
フロントには小机の代わりのカラーボックスがあって、その上にリストはバインダーに挟まれて置かれていた。

リストは客がついたときに時間を管理する表。
部屋番号とそこに入室してる女の子の名前が記入されている。

ナナの名前が記入されてる欄に小さな丸印をつけながら、壁掛けの内線電話の受話器を上げた村井は、「あ、ナナさん、45分で準備おねがいします。準備できたら案内のカーテンまできてください」と伝えている。

この店では、女の子に対しては『ちゃん付け』しようと決めていた。

が、村井だけは、常に女の子に対して『さん付け』の敬語だった。

竹山はお釣りと会員証を客に手渡している。

「それでは、準備の時間だけ、こちらでお待ちください」
「どのくらい?」
「5分もかからないです」
「わかりました」

ナナと顔を合わせないように、オーナーがササッと後ろのカーテンから出ていって、空いている3番の個室へ動いた。

それから1分も経たずに「準備できたよ」といたずらっぽい言いかたをしたナナが、後ろのカーテンからひょこっと顔を出した。

「ちょとナナちゃん、まってね」
「ウン」
「いま、お客さん、ツメきっているから」
「もう、やる気マンマン。どんな人?」
「リュックの人」
「最初からリュックの人なんだ。ナナちんリュックの人、おおいからなぁ」

源氏名が気に入っているのか、自身のことを『ナナちん』と呼んで明るく話す。

裸ワイシャツの軽装となっていて、やはり色気はさほどないが、愛嬌はたっぷりとある女の子だ。

パチンパチンとの爪切りの音が終わった。
竹山は待合室の客に声をかけて、もうひとつあるカーテンの前まで案内する。

個室への通路を隔てているカーテンだ。
これを『案内のカーテン』と呼んでいた。

「ナナさんです、どうぞ」と案内のカーテンは開けられる。
客と対面したナナは「こんにちわぁ」と弾んだ声で客の手をとり、「じゃ、おへやいこ」と手を引いて個室へ。

リストの丸印の横には、このときから40分後の時間が記入される。

同じ手順で、3人目に来店した客にコハルをつける頃には、脱衣をして、ピンクのバスタオルを腰に巻いた客をナナが「シャワーはいりまーす」と共用シャワーに手を引く。

4人目に来店した客にアオイをつける頃には、「シャワーでまーす」とコハルの声がして笑い声を交ぜながら個室に戻っている。

シャワーのときに、客同士が通路で顔を合わせないように、女の子はドアを少しあけて声をかけ合う。
慣れたものだった。

サービス時間を短くするのはありか?

5人目の客がサクラについて個室に入ったときには、すでに竹山は2人組みの受付をしていた。

ナナとコハルで写真指名が決まりそうな気配。

「この2人、店長おススメなんで、人気あるんですよ」
「待ちが15分か・・・」
「いつもは、1時間待ちはザラですよ、15分なんで短いほうです」
「うーん」
「まちがえないですから」
「そこまでいうなら、じゃあ、このコで」
「ありがとうございます」

連れも合わせてナナとコハルで写真指名が決まり、やがて2人分の料金が村井に手渡されて、リストには丸印が新たにふたつ記された。

そうこうしてるうちに、ナナは終了時間の15分前となる。
村井は内線の受話器をとり、ナナの部屋番号を押して、「お時間10分前です」と伝えている。

「ナナは、すっごいマイペースなんです。どんなに混んでいても、まったく焦るってことがないんで」
「へえぇ、そんなふうには見えないね」
「客と盛り上がると、もう時間なんて気にせずにいるんで、まあ、そういうところがいいんでしょうけど」
「むずかいしいもんだね」
「なんで、次の客が続いてるときは、15分前からガンガン内線して急かさないと、ふつうに時間押すんですよ」
「なるほどね」

すでにプレイは終わっていてお喋りでもしていたのか、すぐに向こうで「シャワーはいりまーす」とナナの声が聞えた。

それに続いてコハルの「シャワーはいりまーす」との声もした。

「コハルはいつも時間ぴったりか、ちょっと早めなんです。ぜったいに時間はオーバーしないんで」
「時間って、早めの終わりはあり?」
「ええ、アリです。5分とか10分だったらですけど。で、コハルは巻きでやってっていっても、客を満足させて早めに帰すこともできるんで。要領がいいんでしょうね」
「要領か・・・」

シャワーが終わり個室に戻り、客の身支度が整ったら「お部屋でます」との内線がくる。

フロントのほうで、他の客と重ならないのを確かめてから「じゃ、お見送りで」と伝えると、女の子は客の手を引いて案内のカーテンまで一緒にくる。

頃合を見計らって、反対側から竹山が案内のカーテンを開けて「それではお時間ですので」と声をかける。

「またね」という声に送られて「バイバイ」と手を振りながら客が出てきて帰っていく。

リストの丸印は黒く塗りつぶされて、これで1回転となる。

風俗店のボリューム大きめの音楽

先に返されたのはコハルの客だった。

まだナナの客は着替えているらしい。
村井がまた内線をいれて「もう、お時間です」と伝えている。

煙草を吸っている竹山に、・・・竹山が煙草を吸うとのんびりしているように見えるせいか、受話器を置いた村井が指示するように言った。

「ナナが客を帰す前に、先にコハルの客を入れましょう」
「はい」
「もう、コハル、準備できてるんで」
「じゃ、客、入れます」

待合室のコハルの客は、案内のカーテンを通されて手を引かれて個室へ。

入れ替わりでナナから「お部屋でるよ」との内線がきて、客は帰された。

さらに入れ替わるようにチケットを手にした新しい客が来店。竹山が「いらっしゃいませ!」と声をかけている。

手前のカーテンをめくりフロントに半身を入れた竹山に、プロフィールを手渡しながら村井がいう

「ナナの客、僕、入れるんで。そっち受付してください」
「はい」
「なんとか、アオイで」
「はい」

待合室にいた客は案内のカーテンを通されて、ナナに手を引かれて個室へ。

入れ替わりにまた新しい客が来店。
竹山と村井は「いらっしゃいませ!」と受付を続けている。
自分と小泉は、それらをカーテンの隙間から見ている。

待合室には4人が座り、リストには次々と丸印と時間が記入されていた。

有線の音楽はロックチャンネルのままで、ボリュームは上げられている。

声消しのためだ。
待合室の客に、受付してる声が丸聞こえにならないように、混んでくるとボリュームは少しづつ上がっていった。

音楽の合間には「シャワーはいりまーす」と「シャワーでまーす」との女の子の明るい声が聞える。

案内のカーテンが開かれる度に「こんにちわっ」や「またねっ」との弾んだ声もする。

共用シャワーから洩れてくる湯気に、ボディーソープの匂いに、上気した汗も体液もあるのかもしれないが、それらが混じり合わさった湿度が高めの空気が店内に充満してきてもいる。

その湿度が高くなってきた空気に、ボリューム大きめの音楽と女の子の声が交わる。

来店した客はこの空気に触れると、なにやら混んでいる様子がすぐに伝わるようだった。

混んでいるとなると、客は焦ったようにプロフィールを見て指名をして、多少の待ち時間があっても入りたがるのだった。

最初の客がササッと帰ってしまったのは、この空気がなかったからかもしれない。

来客は続いていたが、自分と村井は23時に上がった。
明日は9時30分に店を開いて、村井と2人で早番をやるからだ。

– 2018.3.17 up –