AVプロダクションの面接の注意点


AV出演がバレるいくつかの理由

17時30分になる。
レナには3人目の客がついていた。
気がかりだが、自分は早番を上がった。

まっすぐに足早に帰る。
すぐにオナニーをするつもり。

講習の射精感をそのままにしておくのは、やはりムラムラ感が残る。

西向天神社の石段を、たたたっと上がる。
久々に、3年前にスカウトした恭子のAVでオナニーすると決めたのだ。

「彼氏と沖縄にいきたい!」という恭子は「バレないようにやろう」には曖昧な頷きがあったまま、西新宿のAVプロダクションの面接に連れていった。

「バレないように・・・」と曖昧なままの女の子を面接に連れいくのには、最適なAVプロダクションだった。

バレについては、マネージャーが宣材写真やサンプルパッケージを見せながら説明した。

「バレる子ってのは、こんな米粒くらいの顔がパッケージに出てもバレるんです。だけどバレない子ってのは、顔がアップに映っていてもバレないんです。なんでかっていうと、バレる子ってのは認めちゃうんですよ。うん、わたしじゃないって言いきれば大丈夫。だってメイクもしてるし。あとね、友達には話さないこと。そうでしょ?内緒にしといてっていても友達はあちこちに話すんだから」

恭子は少しだけ、ほんの5ミリくらいの頷きを見せてから、差し出された所属契約の用紙に記入した。

この曖昧な小さな頷きがスカウトバックが発生した瞬間だったが、恭子の場合は金額は上振れしない。

1回だけのバイト感覚のAVのつもりだし、パッケージはNGだからだ。

この条件だと、恭子の営業は企画。
総ギャラは20万が相場。

このAVプロダクションで総ギャラが20万だったら、恭子のギャラは50%の10万。

スカウトバックは預けの20%で4万で終了だ。

AVデビューしたギャラが基準になる

恭子には説明してないが、AVのギャラというの、最初の額が基準となる。

最初のメーカーで総ギャラが50万円だったら、次のメーカーも50万からとなる。

それが最初が総ギャラ20万で、そのあとに『次もやります』と『パッケージもOKです』と気が変わっても、次は総ギャラ50万にはならない。
20万からになる。

だから最初の営業こそが重要だけど、恭子はなりゆきで小さなスカウトバックで終わってしまった。

なりゆきというよりも「彼氏と沖縄にいきたい!」などという恭子の笑顔がそうさせた。

そのためのバイトとしてAVをやる、という理由にも苛立ちがあった。

いずれにしても、恭子への扱いはAVプロダクションにバトンタッチとなり、この後は宣材を撮ってメーカーに営業となる。

予想したとおりに、その1回だけの撮影で恭子はAVプロダクションをやめた。

やめるといっても、AVプロダクションからの電話に出なければいいだけ。

自分も電話することなかったし、スカウト通りで姿を見かけることもなかった。

恭子のスカウトバックは10万。
総ギャラが50万の20%の10万。

恭子のギャラは50%の25万。
以外に高い。

インディーズメーカーのハードな撮影だったので、企画にしては高めの総ギャラだったのだ。

恭子のようなアルバイト感覚の女の子には、撮影内容は詳しく説明せずにハードな現場に入れ込むAVプロダクションだった。

彼氏に内緒で1回だけのAV出演

家に着くと、すぐにティッシュとローションを用意。
恭子の1回だけのAVを取り出した。

スカウトの戦利品として、コレクションしてあるAVのうちのひとつだった。

パッケージには、手で顔を隠している女の子がいて『AVデビュー!連続生中出し!即引退!』というありふれたタイトルがある。

過激さを標榜するインディーズメーカーから発売されるAVでは『生中出し』のキャッチコピーが流行のようにして使われはじめていた。

それまでは本番はゴム付きとなっていて、擬似本番での撮影もありえたAVが、生中出しが解禁されたかのような時期だった。

再生した。
明るい室内でソファーに座る恭子には、メイクが大人っぽく施されていて、一見すると別人にも見える。

インタビューに答える女の子
『AVデビュー!連続生中出し!即引退!』というありふれたタイトルだった

恭子の表情は明るい。
背後のレースのカーテンからは自然光が当たる。
カメラを向けられて、インタビューに答えていく。

AVにはプロットがある。
設定というのか。
話している内容は、すべてが打ち合わせ通り。

興味があって自ら応募しました、セックスが好きです、彼氏に内緒の出演です、かっこいい男の人とセックスしたいです、と話している。

「彼氏と沖縄にいきたい!」とは話されないが、いかに彼氏が好きなのかを話すところは素の笑顔のようである。

素の笑顔は、じっくりと鑑賞。
それから早送り。

もう繰り返し見ているので、ヌキどころはわかっている。

なぜAV男優にはおじさんが多い?

早送りを止めた。
インタビューの途中だが流れが変わる部分だ。

ドアの向こうから登場してきた男は、数えれるだけでも8人はいる。

AV男優という洒落れた若い男ではない。
白いブリーフの中年男の集団。
穏やかな自然光の室内に、小汚い裸体が並んだ。

くすんだ肌色の者も、2段腹の者も弛んだ腹の者も、乱れた薄毛に油ぎった七三分けの者も、胸毛や腹毛が濃い者も。

四角い眼鏡の無表情だったり、薄ら笑いだったり、飛びかかるばかりに目を見開いていたり、興奮を隠すことなく口で息をしていたり、ブリーフに手をいれてしごいていたり。

いずれも、街中ではしょぼくれて歩いているだろう中年男だが、この場では異彩を放っている。

多人数の男とは聞かされてなかったのか。
かっこいいAV男優ばかりと聞いていたのか。

それとも、中年男の集団の登場に悪意を察したのか。
すべてを含めてなのか。

恭子の笑顔が驚きに変わる瞬間がよく撮れている。

「え、これって、なんですか!」
「・・・」
「え、え、きいてないっ」
「・・・」

まず1回目にヌケるのが、このときに恭子の表情。
落差。

「彼氏と沖縄にいきたい!」という笑顔と、驚きと諦めと後悔が交じった表情のへの落差だけでヌケる。

無責任を感じながらの射精ってある。
自分のスカウトで生じたことには一切の責任を負わない。

なんてったって、本人の自由意志の契約に基づいている。
プロットがあって演技でもある。

それに憲法のいうところの、表現の自由の保障によっての作品なのだから。

そう開き直りながらオナニーをすると解放感があって気持ちいいと、このAVが発売された頃の日記にはある。

恭子だって彼氏との沖縄は楽しかっただろう、人助けをした、とも書いてある。

キスNGが条件のAV出演

拒んでもカメラは止まらない。

今になって恭子の意思で撮影を止めたなら、高額な違約金の支払いが発生する。

いや、拒んでいるのてはなくて、すべてがプロットに沿った演技である。

体に手をかけられた恭子は顔を背ける。
目を見開き気味の中年男が、気持ちわるいほど優しく迫る。

「キスはイヤ!」
「なんでぇ、キスしようよ」
「ヤダ!キモいキモいキモイ!」
「キスしようよぉ」

「キスはNG」という条件は「事務所のマネージャーにしっかりと言おうね」と曖昧にしたままだった。

条件にしていた『キスNG』は解消されたのか。
曖昧なままになっているのか。

それとも誤魔化しがあるのか。
聞いてないことになっているのか。
ただ単に無理やりなのか。

「ちょっと!キスはイヤ!」
「おい!オマエ!」
「エ・・・」
「AVナメんなよ!こらぁ!」

目を見開き気味の中年男は、恭子の肩を突かんで、前後に揺さぶりながら怒鳴りつけた。

どこかしょぼい怒声だったが、恭子はびくっとして全身から力が抜けたのがわかる。

ほぼ同時といっていいほどのコンビネーションで、3人の中年男が運動で使うようなマットを持ち出してきて床に敷く。

もう3人によって、恭子はソファーから引きずり落とされた。

ここもヌキどころ。
悪意と嘲笑に取り囲まれた恭子が、強引に服を剥ぎ取られていく場面が。

彼氏と沖縄にいきたいんだろ・・・と、つぶやいて勃起をしごくいる自分がいる。

胸毛の濃い中年男が顔を近づけると、また恭子は「キスはイヤ!」と顔を反らせた。

恭子は抵抗しすぎた。
だから男8人がかりで押さえつけられる。

また、胸毛の中年男がキスをしようとして、恭子の髪を掴んで顔を近づける。

恭子は目をぎゅっと閉じて唇も固く閉じてるが、胸毛がこじあけようとして頬を強く掴んだ。

堅く閉じている唇は、頬を掴まれた痛さでこじ開けられた。
途端に胸毛は、こじ開けた恭子の口の中にんんんん・・・と唾液を垂らした。

「イヤァッッ」
「んんんんん・・・」
「ぺッ、ペッペッ」
「んんんんん・・・」

中年男は目を見開きながら唾液を垂らす。
恭子のひときわ高い悲鳴に、中年男の集団は狂喜する。

「イヤァッッッ、ペッペッ」
「キスできるじゃん!」

髪を掴まれたままの恭子には、代わる代わる濃厚なキス、・・・というよりも唾液垂らしが続いている。

恭子は目をぎゅっと閉じて「ンンン」と呻く。

AVでは本当に中出しをしているの?

抵抗とキスが繰り返されて、髪が乱れた恭子は羽交い締めされて、目の前には勃起が次々に差し出された。

フェラを要求されている。
というよりもイマラチオ。

全員のイマラチオを終わるまで、何度か怒声を浴びてもいる。
挿入されるときには、また恭子は抵抗している。

結局は押さえつけられている。

「エッ!ちょっと!」
「ああぁぁぁ、ナマではいったよ」
「エッ!イヤァァッ」
「あれ?なんだか、レイプされてるみたいだよ。もっと楽しそうにやろうよ」

他人事のように中年男が半笑いした。
挿入された恭子には、中年男がうねうねと群がる。

1人の中年男は這いつくばってキスを続けてから顔面舐めをして、もう1人の中年男も這いつくばって髪を口に含んで耳を舐り、もう1人の中年男も這いつくばって執拗に乳首に吸い付いて、1人づつの中年男が足指を手にとって舐めている。

汗だくになって、腰をもそもそと振っている中年男が「中に出すよ」と優しく告げた。
同時に、カメラが恭子の顔をアップにした。

中出しを告げられた恭子は「エッ」と驚いたように目を見開いてから、一瞬だけ「アァッ」と感じた声を洩らす。
感じているのと、嫌悪が交ざった表情を見せた。

感じているのを隠せなかったのが、実際はゴム付きで、恭子も嫌がる演技をしているだけと思わせる。

恭子は中出しをされないように、中年男の体から離れようとして、圧しかかってくる胸元を両手で一生懸命に押している。
が、恭子の倍以上の太さがある中年男はびくともしない。

なんという「彼氏と沖縄にいきたい!」という言葉の重さ。
重さに圧されている恭子がいじらしくも見させる。
勃起を増させる。

押しのけようとするのをやめた恭子は、また一瞬だけ「アッ」と感じた声を洩らしてからは、あきらめの陰が顔に差して「アア・・・」と喘いでいく。

この、あきらめがヌケる。
あきらめながら喘ぐのがヌケる。

嫌がりながら、中出しで感じるところでもヌケる。

AVの演技だなんてとてもいえない

いや、ヌケた。
3年経った今の自分は『もし演技でなかったら』と少なからず責任を感じて、画面の恭子に対して「ごめんね・・・」とつぶやきながら勃起をしごいているだけだった。

「ごめんね・・・」は、勃起をしごく分だけ繰り返される。
謝罪の念からくる射精ってある。

イキたいのだ。
早く。

とにかく早く果てたい、とにかく早く済ませたい、とにかく早く無心に達したい、と内奥が欲している。

「ああ!恭子!」と射精をして「オレだって・・・」と「真由美と・・・」と「沖縄いく約束してたのに・・・」とつぶやきながら脈動していた。

射精は収まった。

画面の恭子には中年男が中出ししていた。

モザイクごしにアップされたマンコから、精液が垂れ流れているのが映し出されている。

擬似精液をスポイトで入れただけかもしれないし、もしかすると本当に中出ししたのかもしれない。

1人の中年男が「気持ちよかったでしょ?」と半笑いで優しく声をかけた。

「できちゃう・・・」と泣き顔をする恭子には、すぐに別の中年男が膝立ちでスライディングするようにして挿入する。

恭子は「もう・・・、やめて・・・」と力がなく顔を振るが、ここから人数分の中出しと顔射が連続していくのだ。

再生を止めた。

射精と当時に、謝罪の念はすっかりと消失していた。

それだけの謝罪の念だったし、今日のレナには優しくできる気持ちが明るく満ちてきていた。

射精感とは理不尽にまみれていた。

講習をソフトにしてもハードにしてもトビとなる

翌日の早番で店にいくと、竹山のメモとアンケート用紙が置いてあった。

< レナ、アンケートよかったです!期待の新人です!今日は遅番から終電までです!> とある。

リストを見ると、22時に上がるまでに6本がついていた。
45分が3本、60分が3本。

雑費2500円を引いて、レナが稼いだ金額は44000円。
希望の3万は無事に超えたのだった。

が、15時すぎても出勤確認の電話はなかった。
こちらから電話しても折り返しもない。

1日でトビとなってしまったのだ。
トビは仕方がないが、徒労感がくる。

小泉も首をひねっている。

「あのコ、トビだな」
「そうですか・・・、大丈夫そうだったんですけど」
「これで、遅番の出勤が3人か、まずいな」
「まずいですね」

シフト表に記入してあるレナの欄に横線を引いた。
横線を引くことで、きっぱりとあきらめがつくようだった。

「ここはサクラの出番かな」
「それしかないです」
「オレが電話するか・・・」
「おねがいします。でも、レナ、惜しいですね」
「惜しいけど、仕方ない」
「ですね」

講習をソフトにしても、厳しめにしても、トビとなる女の子はトビとなる。

射精しようが、シックスナインしようが、続く女の子は続く。
だったら厳し目でもいい。

他店の講習を基準にしても仕方がない。
実技があろうか、射精しようがかまわない。

この店の講習はこうなんです、でいいではないか。
女の子だって覚悟を決めて面接にきてるんだ。

やるやらないの話ではなくて、どこまでできるのかやらないといけない・・・と知った気もした。

次の講習からは、厳しめにして射精もありでしようと決めた。

それと、講習のときに、彼氏について話しすぎたのかもしれない。

店が終わったあとのレナには、罪悪感のぶり返しがきたのかもしれない。

– 2018.7.21 up –