AV男優の体験談


AVの面接のカメラテストがハメ撮りになっちゃった

打ち合わせなしのカメラテストが、突然にして面接ハメ撮りだと明かされた。

それはありえるとしても、その相手が自分だとは想像もしてなかった純子は、目を丸くして驚いている。

向けられたビデオカメラには、驚きの表情がしっかりと収められている。

自分は苦役のつもりではあるが、張り切っているかのように服を脱いで放りはじめていた。

純子は被害者のように、もっと動転さなければならない。

社長の猫撫で声は、ビデオカメラごしに続いた。

「じゃ、スカウトマンさん、おねがいします」
「ちょっと!田中さん!なに脱いんですか!向こう行ってください!」
「だいじょうぶですよぉ。こちらのかたは、AV男優としても一流ですから」
「え、ちょっと、え、え、ほんとにするんですか!ムリです!」
「だいじょうぶですよぉ、おねがいしまぁす」
「え、ええええ!ちょっと・・・」

社長としては、純子のこうした驚きも動転も、予想通りだったかもしれない。

さっきまでアドリブで応じていたあたりからして「できません!」とか「かえります!」という事態にはならないと見込んでいたのかもしれない。

しかし、苦役のつもりの自分にとっては残念ではあった。

もし純子が激しい抵抗だったなら、社長の猫撫で声は「AVなんだよぉぉ!」という怒声に一変していた。

それでも抵抗があれば「AVなんだよぉぉ!」とヘッドロックくらいはするし、「AVなんだよぉぉ!」と頬を掴んで奥歯を指でぐりぐりしたりもする。

抵抗の激しさによっては「AVなんだよぉぉ!」と足払いで布団に倒したり、同じく「AVなんだよぉぉ!」とタックルして抱え上げたり、同じく「AVなんだよぉぉ!」と拳で殴るマネをしたりと豹変する。

豹変の効果を増させるための猫撫で声だった。

面接者が豹変するのも、暴力が意表をついているのも悲鳴があがるのも、《実録!面接ハメ撮りシリーズ!》のパターンのひとつだった。

「AVなんだよぉぉ!」の怒声にも意味がある。

もし、女の子が事後に警察に駆け込んだ場合、AVの撮影であれば一切は咎められない。

AV業界は、警察の天下り団体に、倫理というものを審査して頂くべく審査料を上納、いや、納めている。

すべてのAVのモザイクは警察の利権である。

だから警察は、AVの撮影であれば、AVの演出であれば、AVの契約であれば、AVの出演料を払っていれば、暴力くらいは咎めない。

そのような説を支持している社長は、激しく抵抗する女の子にはAVだというのを強調して怒声を浴びせて、《実録!面接ハメ撮りシリーズ!》の固定ファンが喜ぶ意表もつく暴力を加えて悲鳴も加えてハメ撮りを敢行する。

まだ抵抗するようなら、暴力の度合いは高まり、レイプまがいのハメ撮りが強行される。

実際に《実録!面接ハメ撮りシリーズ!》で売れているのは、怒声と豹変と暴力と悲鳴が含まれる巻だった。

素人AV男優の意気込み

驚いた女の子の表情とか仕草が、けっこう好きな自分でもあった

純子が驚きや戸惑いではなくて、もっと抵抗したら、今頃は怒声も豹変も暴力も加えられたのに。
心地いい純子の悲鳴が聞けたのに。

自分だってなにもないところから暴力などふるえないが、とてもそんな粗暴な人間ではないが、やらなけばならない苦役としてだったら純子を蹴り倒して「AVなんだよぉぉ!」とチョークスリーパーくらいは十分にできるのに。

「え、田中さんとなんて聞いてない!」
「オレも聞いてないよ」

返事をしながらパンツを脱いだ。
見せつけるようにしてパンツを放った。

「え、え、聞いてない!」
「オレも聞いてない」

全裸になってからは、勃起に力を込めて上向きにした。
純子の前に仁王立ちでにじり寄った。

「ほんとに聞いてない!」
「オレも」

自分が全裸になってからは、社長はカメラマンに徹して、純子とのやり取りを撮り続けている。

「え、え、これって、ふつうなの?」
「ふつうじゃないの?」
「ふつうじゃないよ!」
「だってカメラテストだもん」

マネージャーも無言のまま、わざとらしく三脚のビデオカメラの位置を調整している。

「そうだけど、え、え、でも、え、えええ!田中さんと?」
「うん」

あとは、自分に託された流れとなっている。

持ち上げられたのはわかってはいるが、どこがどうしてなのかはわからないが「AV男優としても一流ですから」とまで称されたのだ。

苦役は苦役として、にわかAV男優として見せ場をつくろうという意気もあることはある。

「もう・・・、ダマされた・・・」
「ごめんね」
「ねえ、どうするの?」
「するしかないでしょ」
「えええぇ、ホントに・・・」
「うん、カメラテストだもん」
「ホントにするの?」
「うん、ゴム付けるよ、ちゃんと」
「え、そういう問題じゃなくて。えぇぇぇ、・・・するの?」
「する」

さっきから純子が見せているのは抵抗ではない。
ただの照れだった。

頬を赤くして、声は媚び色に変わっている。
はじめて見せてきた照れだった。

どんな人がAVプロダクションのオーナーなのか?

ちなみにというか、話が変わる。

この『フレッシュ』の出資者は、社長の奥さん。
ということは、オーナーでもある。

奥さんは、ネイルサロンのオーナーでもある。
意表をつくようにして、ラーメン屋のオーナーでもある。

そして、元AV女優でもある。
社長から直に聞いて知るまでは、何回もオナニーしたことがあるハードコア系のAV女優だった。

とはいってもだ。

それを聞いたところで、知らない人の奥さんのAVだったらともかく、仮にも世話になっている人の奥さんのAVでオナニーするのは大変に気が引けるものだった。

いや、気が引けるのではない。
実際に、奥さんと面識があった上で想像オナニーに耽るのだったら “ やってやった感 ” だってある。

が、それが奥さんと知った上で、AVのみでオナニーが完結するのは “ やってやった感 ” がない。

人様の奥さんをオナペットにして可愛いがるとは “ やってやった感 ” の秘匿こそが醍醐味ではないのか。

とにかくにも、むやみに人様の奥さんに対して性欲の目を向けてはいけないという社会の常識だって自分にはあったが、社長は「妻は元AV女優ですよ」とさらりと言ってのけた。

それが明かされたのは、半年ほど前に社長がスカウト通りに姿を見せて一緒にラーメンを食べたときだった。

仮にも、AVプロダクションという事務所を構える社長が、路上のスカウトに一杯のラーメンでもふるまうのは稀なことだった。

いつだって路上のスカウトは底辺の扱いだったが、元スカウトの社長は心ばかりのことはした。

それがあったから、スカウトバックの条件はイマイチでも、面接に連れていったのもあるかもしれない。

それはいいとして『地獄ラーメン』という大きな看板の店の激辛のラーメンをすすりながら突然だった。

驚いていると社長は続けた。

「妻にプロポーズしたのはここです。ええ、ちょうどこの席ですね。え?ええ、現場の帰りでしたね。お互いにこの地獄ラーメンを食べならですよ。え?すぐにOKでしたよ。この地獄ラーメン食べながらうんっていってましたよ。まあ、AV引退するときでしたからね。ええ。それに僕がスカウトしたんで。ええ、そうです。いいとこに勤めていたんですねどね。でも、それから吉原でソープもさせちゃったんですよねぇ」

軽い衝撃に止まっていると、社長は目を細めて地獄ラーメンの汁をうまそうにすすった。

クズには違いない。

しかしクズはクズでも、あまりにもクズすぎると、飛びぬけてクズだと、堂々たるクズだと、常識などは突き飛ばされる。

自分はエリが内緒でAVに出演したくらいで簡単に発狂して、次の彼女の真由美をAV女優に仕立てても、ソープでも働かせても、それでいて被害者の顔をして追いつめて食いつぶしただけだったのに。

それらを誰にも明かすことができずに、いつまでもウネウネと湿ったミミズ男としてうごめいているのに。

社長が「AVなんだよぉぉ!」と豹変して、暴力を加えて、面接ハメ撮りをする気持ちがなんとなくわかりもする。

奥さんとなる女性をスカウトして、AVをさせたことに、今でも少なからず苦しんでいるんだ。

AVが簡単だと思っている女が腹立たしいし、楽しくAVをやろうとしている女も腹立たしい。

かといってAVを卑下する女も腹立たしいし、それでいてAVを許容している女も腹立たしい。

いや、AV業界なんて、今すぐにでも、この世から消滅したほうがいい。

ごっそりと。
すっきりする。

でも社長はそこに陣取って、采配を振るって金にしている。

社長はスカウトとしても自分よりもはるかに上級者なのだと、地獄ラーメンで思い知ったのだった。

にわかAV男優としてまんぐり返しをしてみた

スカウトはきれいごとじゃないんだ。

まだまだスカウトとしては女慣れしてないと、スカウトの上級者である社長に見抜かれたくなかった。

純子ごときは・・・という気負いがある。

胸の内のどこかには、これくらいはできなければという鼓舞もあるが、顔は平然を装っている。

手を伸ばしすと小さく肩をすくめた純子だったが、頬に手を当ててキスをする。

「ンン・・・」と呻いている純子を木綿布団の上に座らせた。
目の前に、無言のまま、勃起を突き出した。

小さく息をついた純子は、勃起を手に取り、しばらくのフェラがあった。

「倉橋さん、こっちみてくださいね」
「ン・・・」
「こっち見て、カメラのほう見て、そうそう」
「ン・・・」

社長は、カメラ越しに優しく声をかけた。
すべてをこなしている純子が、なぜか腹立たしい

「舌を出してやってみて」
「ン・・・」
「いいですよ」
「ン・・・」

フェラのあとは、純子を木綿布団に寝かせた。
ピタパンのホックを外して脱がして、パンティのフロントに手を入れると体がビクッと震えている。

「キャッ」という小さな悲鳴がしてからは、しばらくのまんぐり返しがあった。

まんぐり返し
まんぐり返しもけっこう好きな自分だった

AV男優としても一流と持ち上げられたから、それっぽいはしなければと念じながら、汗と汁の蒸れとオシッコの匂いが立ちこめている股間を吸った。

顔に指の背をおいて、堪えるようにして横を向いている純子に、社長の指示があった。

「倉橋さん、こっちみてくださいね」
「アアン・・・」

お互いに少し汗ばんでいた。
呼吸も荒かった。

「カメラ、見て、もっと声だしてくださいね」
「アアン・・・」

まんぐり返しのあとは、髪を整えてあげて、脚を開いて、その間に勃起をゆっくりと埋めた。

純子の、ビデオカメラに向けていた目が細まっていって、驚くくらいに大きな声が上がった。

「倉橋さん、相手を本当の恋人だとおもってくださいね」
「アァァ・・・」
「本当の恋人ですよ」
「アァァ・・・」
「感じてるとこみせて」
「アァァ・・・」

純子の体を組み伏せるようにして乱打した。
ひらすら乱打するはずだった。

これは苦役だ・・・と念じながら腰を打ちつけたのに、もうすぐに射精感がきていて、にわかAV男優は無様に腰の動きが度々止まった。

止まったまま、呼吸だけが上ずっている。

射精感を抑えようとすればするほど、苦役を完成させようと念じて乱打しようとしている自分が怪しまれる。

したいのを我慢するのも苦役で、したくないのをするのも苦役・・・ではなかったのか。

予期していた苦役だろうか?

事務所にくるまでに、ピタパンのヒップラインも確かめたし、パンティーラインだって探したではないか。

あのメーカーから返された日の、しょんぼりしていたときあたりからか。

今日のカフェアヤで、ため息をついていたときからかも。

はじめて見せた照れも、手を伸ばしたときに肩を小さくすくめときも、まんぐり返しで顔を背けていたときも、純子の表情や仕草のひとつひとつが一定の量に達して意味を帯びるに至ったようだ。

フェラが上手だったのも、どこにも持っていきようがない嫉心があった。

かわいかった・・・と書き換えることもできる。
かわいさ余って憎さ100倍、という逆パターンというのか。

ともかくだ。
射精感が抑えられない。

テクニックあるAV男優になりたいと腰を振る

シィィィィ・・・と歯の間から息を吸って、また腰の動きが止まった。
様子を覗うようにして、純子が薄目を開けた。

射精感を我慢しているのを気がつかれないように、純子の頭と背を抱きこんで、腰はヘコヘコヘコと動かした。

向けられたビデオカメラに気がつかれないようにして耳元で「純子!」と叱声に似たつぶやきをしたのは、射精感に迫られてるのを隠すための虚勢だった。

喘ぎ声に交じって鼻で笑う呼吸がして、つぶやきがうるさそうに「ンンッッ」と首を振った純子だった。

純子がうるさがるのを許さなかった。
頬をひったくるようにして、唇を合わせて舌を入れた。

「ンッンンンンッ・・・」と舌を絡めてきた純子は、喉元のかすれ声を送ってきた。

なにかを言ってきている。
女の子が持つ、やさしいのに強制力もある指示口調で、なにかを言ってきている。

『撮ってるでしょ・・・』と口の中で言ってきていた。
それがわかったとたんに、一気に胸の空気が抜ける気がした。

慌てて空気の漏れを塞ごうとして、全身がプルプルと小刻みに震えた。

自分の女の子に対する気負いのなんという無力さ。
なんという鼓舞の意味なさ。

なんという小ずるさ。
小ずるいのに、それでいて懸命に女性に虚勢を誇示している。

なんという小さな男。
クズ以下。

いったん自分を卑下してしまったら、もう射精感は引っ込みがつかないところまで込み上げてきた。
射精してしまったら、もうそれまでだ。

抱きかかえた純子を放した。
手荒く屈曲位になって、上から下に勃起を打ち込んだ。

太腿が太腿を打つ肉音がして、卑下は少しの間は我慢させたが、ついに「いきそう・・・」と呻いた。

「じゃぁ、倉橋さん」
「ンン・・・」
「顔射おねがいしますね」
「ハイ・・・、ハイ、アアアッッ」

顔射するのは自分なのに、純子は喘ぎながら何度もうなずいている。

組み伏せるようにしていた屈曲位の脚を解くと、純子はしがみついてこようとしたが跳ね除けた。

慌しく膝立ちで進みながら、慌しくゴムを外す。
外れたと同時に純子に向けて「あっっ」と甲高い呻きと共に射精した。

情けない呻きではあった。
が、精液の先端は、頭の上のほうまで飛んでいく。

3回目ほどの脈動で、純子の鼻筋に精液が降りかかった。

しつこい脈動が止まった。
鼻筋から口元に精液は付着している。

頬には血色がさしていて、半目になって呼吸がおさまってない純子に、社長のビデオカメラが寄った。

「倉橋さん」
「ン・・・」
「感想をおねがいします!」
「ン・・・、きもち・・・、よかった・・・」
「合格!」
「ン・・・、ハイ・・・」
「合格です!」
「ハイ・・・」

社長は叫ぶ。

この社長の叫びで《実録!面接ハメ撮りシリーズ》は終わりに向かう。

鼻筋の精液が透明になって、頬からすべり落ちたところで社長はビデオカメラを置いた。

社長は「よかったよ」と優しく声をかけて「がんばったね」と顔をウェットティッシュで丁寧に拭いてあげている。

マネージャーがガウンをかけてから、服を抱えた純子と社長はパーテーションの向こうに退出していった。

革張りのソファーで飲み物を出して、面接ハメ撮りが突然だったのも、その相手が自分だったのも「これもAVなんだよ」補足される。

社長は「AVってのはね・・・」と大型金庫を背にして補足するのだった。

セックスができるとスカウトが確実に失敗する

面接が終わってから事務所を出た。
エレベーターに乗るまではお互いに無言のまま。

動き出すと純子が横目で自分を見ながら「あーあ」とため息をついた。
怒ってはない。

「どうした?」
「あーあ、田中さんとやっちゃったぁ」
「そうだね」
「本当にだまされた」
「オレも知らなかったんだよ。ごめんね」
「あーあ」
「でもさ、だまされたとおもってっていったでしょ?」
「ううん、はじめからやるつもりだった」
「ほんとに知らなかったんだよ。ごめんね、ね、ごめんね」
「あーあ」
「でも、きもちよかったね」
「もう!」
「だってさ、純子だってさ、きもちいいとかいってなかった?」
「もう!いつもあんなことやってるんでしょ!サイテー!」

純子は目を見開いて、弁解を聞かずに、胸元を思いっきりパンチしてきた。

とはいっても、最低といわれて、叩かれて、楽しい気分になった自分だった。

「純子さ、せっかくだし手でもつなごうか?」
「田中さんとは、そういうのしない」
「なんで?そういうのってなに?おこってるの?」
「はい!」

純子はあきれた声をして、なげやりに手を差しだしてきた。
歩きながら、つないだ手は振られた。

「オレさ、純子としてるとき、なんかよかったな」
「わたし、ぜんぜんよくなかった」
「そうだろうけど、ね、純子さ、なんか、ラーメンたべたくね?」
「うん」
「じゃ、新宿まで歩いてさ、地獄ラーメンいく?」
「地獄?また、へんなのでしょ!」

そのときの自分の頭をひっぱたいてやりたい、と日記に追記する。

純子が可愛いあまりに態度が卑屈に変っているのに気がついていない、と5年経ってから日記を読み返して2行を追記する。

なぜAV女優になったのかわからないまま

面接ハメ撮りは、自主制作AVとして販売されなかった。
純子は大手AVメーカーに営業されたからだった。

パッケージに純子が大きく写っているAVが、よくいくレンタルショップのアダルトコーナーにあった。

れっきとしたAV女優になっている。
倉橋ショコラとなっている。

本名、右近純子からの倉橋ショコラ。
まとめると、シエナで三ツ矢ノエルで倉橋ショコラ。

で、そのAVメーカーのそのレーベルだと1回の総ギャラは単体としては低いが、それでも100万は下らないと人から聞いた。

こういうのを、とらぬ狸の皮算用というのかもしれないが、もしこれがフレッシュではなく、預けの25%のスカウトバックを出すグレイで予定通りにデビューしていたら・・・と計算してしまう。

もちろん、社長には最初から買い叩いてやろうとの意図はなかっただろうから、社長には悪い印象は全く持たなかった。

売れるかどうかだって、実際にやってみなければわからない。

冬になっていた。
もう、スカウト3年目になる頃だった。

スカウト通りにいると純子から電話があった。
用件はない。

AVの現場が終わって新宿で解散したあとの電話で、自分は「1杯飲ませろ!」と言い放ってある。

会うのは久しぶりだった。
もう純子は、現場が終わったら迎えにきてほしい、と言ってこない。

自分のほうとしても、買取りの女の子にそこまでするつもりはなかったのもあるが、すっかりと部外者扱いだ。
すっかり事務所に居ついてもいる。

この前の電話では、社長の奥さんがオーナーをしているラーメン屋がフランチャイズ展開をすることになって、純子も大学を卒業したらそれに加入してオーナー業をすると話していた。

大学では経営学を専攻してるといっていたのを思い出しもしたし、そんな純子がAVをやる理由はなんなんだろうと、ますます女の子がわからなくなりもした。

派手なコートを着た純子が、スカウト通りの向こうに見えた。

いや、派手に見えた。
スカウト通りの緩やかな坂が、派手に見させた。

その緩やかな坂が、ロングコートの裾を威勢よくはためかせて歩かさせていて、冬の風が正面から吹いて、長くなった髪と首元の大判ストールの端を舞わせている。

冬の風の寒さなど感じないようにして歩く純子を、緩やかな坂は、少しだけ見上げる目線にさせている。

1人のスカウトが声をかけたが、無視している。
目の端にもかけない無視。

もう1人のスカウトが「こんちゃ!」とおどけて声をかけたが、それも同じように無視して歩くのが派手さを飾らせた。

あの女をAVに入れ込んで・・・。
たった10万か・・・。
酒の1杯を飲ませてもらってもなぁ・・・。

失敗した。
どこで間違えたのだろうと、うな垂れる思いがした。

– 2023.08.17 up –