めぐみ、性感ヘルスの19歳、番号交換して翌日には連絡とれず


最低でも20人には声をかける

新宿スカウト通り
新宿スカウト通りとフルーツ屋の百果園

夕方のスカウト通りは、もう暗くなりかけていた。
そろそろ、人通りが多くなってきた。

少し前に出てきて、これからスカウトしようかと、人通りを見ながら一服していた。

1日に声をかける人数は特に決めていない。
目安として最低20人程度と決めている。

スカウト通りでいえば、昼から夜と動いて、おおよそ50人には声をかけていれば、仕事として成り立つ。

しかし。
ただ大人数に声をかければよい、というものではない。

相手をよく見ながら声をかける。
『ダメだな』というコは、サッサとバイバイする。

そうして『これは・・・』というコが見つかるまで声をかける。

最初に声をかけたコを連れまわすことができれば、2日も3日も揚がらないときもある。

100人声をかけてみてダメなら気分転換。
それ以上だと、どうしても焦りが相手に見えてしまうようだ。

ゆっくり、ゆっくりとスカウトをすすめる。
最初の20人くらいまでは、ウォーミングアップ代わり。

スカウト通りに出てきた以上は、何があろうとも最低の20人には声をかける。
完全無視や断りが続くと、調子が出てくるものだった。

さてと。
タバコが吸い終わった。

よそ見をしながらテクテクと歩く女のコがきた。
ブリーチで染めたようなキンパ。
ほっぺにニキビがある。

近づくと敏感に気配を感じて、うつむき加減になった。

「ちょっといい?」
「・・・」

無言のままだけど、目はこちらに向けた。
表情からは警戒しているのが分かる。
歩調はそれほど早くない。

「あやしい者ですけど」
「フッ・・・」

笑顔が苦手な自分が、これを言うと以外に効くことに気がついたのは最近。

ただ、声をかけた時点で、完全無視するコには言ってもマヌケになるだけ。

こちらに目を向けた、 歩調を緩めた、などの反応がある場合は殆どリアクションがとれる。

うさんくさい顔面で真剣に言うのがポイント。
他に代わる言葉が今のところ見当たらない。

風俗本業の女の子の表情ってある

それはそうと。
無言のまま警戒していた彼女はクスッとした。

「でもね、人間は正直だから」
「・・・」

表情が崩れれば大丈夫。
彼女と並びながら歩いて、話を続けた。

スカウト通りは、新宿駅に向かって緩やかな坂になっている。
わずかな坂で緩んだ歩調に合わせて、ゆっくりと話す。

「それでね、バイトしてくれるコ探しているんだけど」
「・・・どんなバイト?」
「エッチ系なんだけど・・・、ひょっとして、もう店とかはいってる?」

おそらくこのコは風俗をしてる気がした。

服装が今年冬はやりらしいブルーのジャケット、厚底ブーツに、コギャル風と言うのだろうか。

しかし全体的にはまとまっておらず。
人マネしてるという感じだ。

あと、表情。
つかれた寂しげそうな目。

こういう雰囲気は風俗を本業にして、みっちりやっている特定の女の子に出てくる。

特定の条件は、頭が悪い彼氏がいること、借金があること、そしてなぜか父親が厳しいと言うのも共通する。

特に新宿に限れば、ホストにカケがあると言うのも一致する。
毎日あれやれこれやれ、何日にいくら払え、の繰り返しでは、全体的に若さがなくなるのは当然だ。

今まで、何人もこういう女の子を見てきたが、本人らは性格が優しいいいコが多い。

しかし、こういう女の子は仕事の話をするときは、威圧的で粗暴な “ 頭の悪い男 ” を、意識的に演じないと見くびられる。

自分も、時々はそういう男を演じるが苦手だ。
自分で言うのも変だが、基本的に優しいからだろう。
本当に自分で言うのも変なのだけど。

「ウン、ヘルスしてる・・・」
「どう?、忙しい?」
「うん・・・」

彼女はボソッとした感じで言った。
警戒というよりも、人見知りするなんだろうな、とぼんやり思う。

「いや、社長にかわいいコ探してきてくれって頼まれてさ」
「ムリムリ、お店辞めれないから」
「店は辞めなくていい、AVの事務所だから」
「・・・」
「それでなまえなんていうの」
「・・・めぐみ」
「話しだけ聞いてくれる?」
「・・・」

仕事帰りの彼女からはシャンプーの香りがした。
この後は、18時に彼氏と会う約束をしてる彼女。

『百果園』のフルーツバーを買い、アルタ前の鉄柵に座る。
フルーツバーを食べ終わる時間だけ話した。

予想通り、借金、厳しい父親、頭の悪いカレシという、パターンは当てはまる。

高校を卒業してから風俗以外の仕事をしたことがないらしい。
「風俗と両立して月に何回かやってみよう、撮影は楽しいから」と話すと「うーん」と考えている。

抵抗感はそれほどないと言う。
ただ、人見知りするほうなので不安があるとのこと。
自分もそこが心配だ。

バレやギャラは、それほど気にしていない。
明日また連絡を取り合おうと、番号の交換をする。

これで連絡取れるようだったら、あと、もう少しだろう。
彼女の状況から見て宣材まで行けば、あとは大丈夫だな、と感じた。

翌日。
電話してみるが出ない。
折り返しもない。

気が変わったのか、カレシに正直に話して反対されたのか。
ま、よくあること。

また、アルタ前広場で見かけるかな、と思った。

– 2002.1.20 up –