風俗の講習はなにをするのか?


講習は全体の流れや用品の使い方を実際にやってみる

翌日は9時から村井と早番。

まずはバスタオルの準備。
遅番が使用済みのバスタオルは店前に出しておくと、早朝にリネン業者が新しいものと交換しておく。

60枚のピンクのバスタオルが、大きな2つの袋に詰められて、入口の脇にデンと置いてある。

その袋を店内に運び入れて、それぞれの個室のカラーボックスとベッドの下へ収める。

風俗店のバスタオル
開店準備はまずはバスタオル

個室に店泊してるコハルを起こさなければだ。

コハルはこれから2週間、個室で寝起きしてオープンからラストまで、もちろん休憩を挟みながらのシフトになっている。

その後は、いったん地元の新潟に戻り、また1ヵ月後に店泊して勤める。

個室のドアをノックする。
コハルの寝起きの返事がありドアを開けてみた。 

「おはよう」
「おはようございます・・・」
「起きた?」
「ハイ・・・」
「あれっ、・・・コハル、だよね?」
「ハイ、いいたいことはわかります。今から化粧します」

薄暗がりの中に、えらくブサイクな女の子がいた。
知らないうちに別の女の子がいるのかと確めてしまうと、コハルには睨まれて、ドアをそっと閉めた。

そうしてるうちに、ミエコとマユミから出勤確認の電話がかかってきた。

今日の早番は、ミエコとマユミとコハルの3名。
村井はそこにダミーを4名加えて、計7名の出勤としてプロフィールを用意した。

有線をつける。
入り口に看板を出す。

エレベーターが開いて、ミエコが姿を見せた。
マユミも「おはようございます」とやってきた。
営業してる店、という空気が一気に漲る。

開店時間の10時より前だったが、全員の出勤が揃ったので、チケセン全店にオープンの電話を入れた。
これで割引チケットがパネルの前に出される。

5分も経たずに、割引チケットを手にして客がきた。
人感チャイムが鳴ると同時に、村井は「いらっしゃいませ!」とプロフィールを手にして客に声をかける。

ほどなくしてコハルで写真指名をとって、料金を長財布に収めながらリストに丸印をつけて促した。

「田中さん、マユミの講習をおねがいします」
「ん」
「あとは、僕が1人で大丈夫なんで」
「わかった」
「全体の流れとか、用品の使いかたとか、あとは田中さんのセンスで」
「やってみる」

センスか。
困ったことに、自分はセンスを問われたときには、だいたいにして外してしまう。

しかし、今はそんな呑気なことはいってられない。
早いとこマユミの講習をして、客を入れなければだ。

おととい面接したあとに「講習はまかせて」と村井に断言はしていたが、実のところはマユミと呼べば感情移入してしまう気がしていた。

元彼女の名前を店の在籍の女の子に付けたのは失敗だったかなと、昨日はウチに帰ってから反省を含めて悶々としていた。

悶々としてるのを払拭するために、あの真由美が出演した数々のAVを取り出してパッケージを眺めて、もう彼女はパッケージされた商品に過ぎないんだと念じた。

ショック療法のつもりだった。
が、そのAVを手にしたのが久しぶりだった。

ちょっとだけ再生するつもりが、つい見入ってオナニーもしてしまい、さんざん彼女の名前をつぶやいて射精をしただけで、なんだか余計にあの真由美に対して反省の感が強まっただけだった。

自分は一体なにをしたいのだろう。

店長の立場での講習は勝手がちがう

とりあえず、目の前の講習をするしかない。
マユミの個室のドアをノックした。

ベッドにちょこんと座っていたマユミに、さも当たり前のように言い放った。

「マユミ、講習するよ」
「あ、あの・・・」
「うん」
「やっぱり・・・、講習ってするんですか?」
「いきなりはできないでしょ。教えたいこともあるし」
「アッ、ハイ・・・」
「練習だから。じゃ、脱いじゃおう」
「ハイ・・・」

かまわずに、自分はジャケットとシャツを素早く脱いだ。

とりあえず全裸になるしかないのか。
パンツを脱いで全裸になりながらも、ここからどうやろうと内心では迷っている。

センスといわれても、さらりとチンコを出すことくらいしかできなかった。

コートだけは脱いでいるマユミが戸惑いの声で、わかりきったことを訊いてきた。

「エッ、エッ、あの・・・」
「どうしたの?」
「エッ、あの・・・、講習って・・・」
「うん」
「店長と・・・、ですか?」
「え、そうだけど」
「エッ、エッ、今から・・・、ですか?」
「今からだけど」
「アッ、ハイ・・・」
「・・・」

できれば講習はしたくない、というのが伝わってきた。
だけど彼女の目には、男のために働こうと覚悟を決めた女の子の火光がある。

彼女がというより、彼氏が講習されるのを嫌がっていたのを引きずっている様子にみえた。

女の子がモジモジと服を脱ぐ直前の、いちばんドキドキする瞬間を経て、マユミは下着姿となった。
脱いだ服を丁寧に壁のハンガーにかけている。

顔立ちは派手なのに、下着はシンプルで水玉の綿素材というコントラストが勃起を増大させた。

視姦されてると察したマユミが、また戸惑いの声でわかりきったことを訊いてきた。

「あの・・・」
「うん」
「ぜんぶ・・・、ですか?」
「え、ぜんぶって?」
「脱ぐのって・・・」
「うん、ぜんぶだけど」
「エッ、エッ、今ですか?」
「今だけど」

全裸の勃起で平然とは返事をしているが、ちょっと違うと自分でも戸惑っている。

つき合ってる彼女を風俗嬢にするためにフェラテクを教えこんだことは幾度かあっても、スカウトした女の子を風俗の練習だとホテルに連れこんだことは度々あっても、店長の立場で営業中の店舗で講習するとなると勝手が違うと今になって戸惑っている。

つき合ってる彼女に対しては、フェラテクを教えたというよりも、これから風俗をさせるとなると落ち着かない呼吸と得も知れない勃起がそこにはあるもので、彼女もそれをわかって鎮静させるために施してくれた部分が大きい。

スカウトの女の子にしても練習したというより、度胸をつけるというのか、踏ん切りをつけるというのか、成り行きまかせの言い訳づくりといった部分が大きかった。

テレは突き返さないと伝染する

店長としてどこまで素を出していいだろう。
彼女の戸惑いを笑って流してもいいのか。

そもそもこんなにも勃起を晒していいものなのか。
自分も内心では戸惑ってもいる。

「エッ・・・」
「どうしたの?」
「いえ・・・、アアッ・・・、なんか・・・」
「んん」
「脱ぐのって・・・」
「んん」

マユミの目に照れが含まれていた。
この照れというのはきっぱりと突き返さないと、お互いに伝染しまう。

「今・・・、ですよね?」
「今」
「アッ、ハイ・・・」
「・・・」

毅然とした全裸の仁王立ちで、ズイと拳を握り、勃起に力を込めながら照れは突き返した。

速攻で突き返されて、下を向いたマユミの下着がゆっくりと外された。

彼女のような女の子に、多勢の男が当然に期待してるとおりの裸だった。

陰毛の茂りには若さを感じた。
すっかりと智子の裸が基準となっているのを自覚した。

40代の熟女のしなしなと股間に張り付いた陰毛と比べると、19歳の陰毛は艶もコシもある。

新緑の草木というような、今、ぐいぐいと伸びている勢いを感じさせる陰毛の茂み。

その新緑に鼻を突きつけて、もわっとするに匂いも吸い込んで確めてみたい。

いかん。
今は若い陰毛にしみじみしてる場合じゃない、と雑念を振り払った。

「あ、タイマーセット忘れてた」
「・・・」
「これね、タイマー。45分だったら30分にセットして。お客さんと部屋にきた時点で」
「ハイ、45分は30分・・・」
「で、最初にシャワーあびて、プレイして、タイマーが鳴ったらまたシャワー」
「ハイ、シャワーでシャワー・・・」
「で、着替えたら40分、お客さんを45分には帰すと」
「ハイ・・・」
「実際にやってみよう」
「ア、ハイ」

確かあの真由美から。
タイマーセットは時間15分前と巻きのときは20分前と知識として教えてもらった。

昨日の寝る前に予想したとおり、いちいちあの真由美を思い出してしまっていた。

イソジンはNASAが開発したうがい薬だという豆知識

お互いにバスタオルを巻いて、ドアを少し開けて「シャワーはいりまーす」とマユミに言わせてみせて、ユニットシャワーに入る。

遅れてコハルの「シャワーはいりまーす」との声がして、客とじゃれあうようにして笑い合いながら隣に入ってきた。

こちらはお互いに笑い合う余裕がない。
マユミは、忙しく手を動かさなくてはだった。

シャワーのお湯加減を確かめて、客の体をサッと流して、無臭のボディーソープをを手の平にチョイとつけて、耳、首、胸、脇、手、背中とサワサワと撫でるように洗っていく。

その間にも備えつけの使い捨て歯ブラシを手渡す。
歯ブラシを終えたらイソジンでうがい。

イソジンは苦くて後味が悪い。
コップに原液を注いで、シャワーで10倍ほどに薄めてからガラガラペッとさせる。

イソジンはNASAが開発したうがい薬だと、あの真由美から聞いたこともある。

いや、そんな豆知識など今はどうでもいい。
本当のところは知らないし。

マユミの手の平は、サワサワと撫でるように体を洗っていく。

そういえばあの真由美には、店でのシャワーのときに客にどうやっているのかと、体の洗い方も実演させてみたりもしていた。

あの真由美の風俗の初日は、店ではどんなだったのだろう。
ふとそんなことが頭をかすめて、いい加減にうじうじするのをやめろ、と自分をこっそりと叱咤した。

ナメクジだ。
ナメクジ男だ。

5年以上も前の彼女にしたことに、未だにウネウネと張りついて、クネクネと這い回っているだけの気持ち悪いナメクジ男。
そんなナメクジ男でいいのか、と自身をまたこっそりと叱咤して、あの真由美を振り切った。

振り切ったとたんに勃起がひくりとした。

「じゃ、マユミ、チンコ洗ってみよう」
「ウン」
「チンコにはこのグリンスね、ああ、あと手の平にも。そこはボディーソープにこのグリンスを交ぜて洗って」
「グリンス?」
「うん、消毒石鹸。けっこう強力だから、肌にはつけないで」
「そうなの?」
「うん、ヒリヒリするから」
「フーン」

グリンスでチンコを洗ったときに、相手が『しみる!』と言うようだったら、淋病の疑いあり。
ちゃんと理由を伝えてゴムフェラとする。

そんな性病についての説明をしていると、隣のコハルが「シャワーでまーす」と個室へ戻っていった。

ちょっと急がなければ。

「ここわかる?亀さんのカリ裏」
「ここ?」
「うん、ここを指先でなぞるように洗って」
「こう?」
「うん。・・・あ、手つきがいい」
「フ・・・」
「で、玉の裏も。やさしく」
「こう?」
「うん。・・・でお尻のほうまで指先でこすって」
「こう?」

あとは実際に、客をこなすしかないか。
ボディーソープを洗い流してシャワーを終えた。

体を拭いてあげて、バスタオルを腰巻してあげて、というあたりはマユミは上手にこなしている。

通路の様子を見てから「シャワーでまーす」と手を引いて個室へ戻るのも、意外と上手にこなした。

全身リップはキス音を過剰に

個室の照明を落とすと、それまでのマユミに浮かんでいた愛嬌の笑みが潜んだのがわかった。

ヘルスプレイの基本は、女の子のほうから攻めていく。

「マユミ」
「ウン」
「お客さんにはキスから攻めて、女の子のほうから」
「ウン」
「できるか?」
「ウン、できる・・・」

自分をじっと見ながら、女の子だけが持っている度胸を見せつけるときの目をしながら、マユミはこくりとうなずいた。

尖ったあごを指でつかんでキスをした。
舌先を出すと、喉元で呻いたマユミも舌先を合わせてきた。

止まらずにもぞもぞしてると、最初にセットしたタイマーがピピピと鳴った。
30分があっという間だった。

この分だと、講習が終わるのに1時間以上はかかってしまうのではないか。

また30分でタイマーセットした。

「そしたら、お客さんをベッドに寝かせて」
「ウン」
「全身リップからいこうか。前戯ね」
「エ、わかんない・・・」
「やってみよう」
「ウン」

体の上にまたがったマユミは、唇にキスをしてから、耳元に唇を押しつけていく。

キス音と息遣いが耳の穴に入り込んできて呻いている。

・・・チュパピチュピチュチュパチュチュチュチュ・・・

唇の圧感がほどいい。
ゆっくりめに動いていくリズム感もいい。

風俗行きを決めた彼氏が、しっかりと手ほどきしたのだろうか。

だとすれば、相当にフェラも上手だろうなと、乳首舐めをされながら呻いた。

「マユミ」
「ン・・・」
「そのまま、股間までリップして、玉も棒もやってみて」
「ンン・・・」

下半身に唇が動いていくと、金玉に顔を埋めるようにしてから裏筋を舐めあげていく。

ゆっくりと。
チンコの感じるツボをチロチロを舌先が這う。

彼氏のマーキングがフェラに現れていた

されるがままにしてる。
舐めあげてからは先端は口に含まれた。

フェラは上手だった。
上唇と舌で肉棒を挟みこんで、頬をすぼめて上下するというテクニック。

ゆっくりと上下しながら、・・・そのゆっくり度と圧感がほどよい。

唇から舌をはみ出させて、ねちっこく肉棒に張りいていく。

・・・ジュルルルゥゥゥジュルルルルゥゥゥルゥゥルゥゥジュルゥ・・・

わざと涎音を立てながら咥えこんでいく。

彼氏か。
好みのフェラの方法をじっくりと教え込んである。

マユミも、教わった方法を、忠実に繰り返しているのが伝わってくる。

彼氏のマーキングが、動物の雄がテリトリーを誇示するためのマーキングが、マユミの忠実なフェラテクに現れている。

そうなると、こちらとしては店長としてのマーキングをしたくなる。

フェラ顔だ。

彼氏が教えきれてないし、今のままでも十分にいいのだが、笑んで目を合わせるくらいはしたほうがいい。

「マユミさ」
「ンン・・・」
「お客さんって、フェラしてるところを見るからさ」
「ンン・・・」
「フェラ顔を見せるようにやってみて」
「フェラ・・・、顔・・・」

マユミは勃起から唇を離して訊いてきた。

フェラ顔という語句を知らないのだ。
やはり彼氏は、そこまで教えてないのか。

客に性感は与えさせても、不必要に喜ばせるためのテクニックまでは教えたくなかったのか。

中途半端な男だ、とマユミには全く関係ないところで苛立った。

– 2018.3.25 up –